新築のマンション価格が高騰している今、中古物件の購入・リノベーションを検討する方もいらっしゃるでしょう。公団住宅というと賃貸を思い浮かべがちですが、なかには購入できる物件もあります。公団住宅は築40年以上とかなり古い物件も少なくありません。しかし割安な価格で購入でき、リノベーションを施せば新築同様の住まいにできる点は大きな魅力といえるでしょう。一方で、やはり築年数の古さや公団住宅ならではの注意点もあります。今回はリノベーション目的で公団住宅を購入する際、後悔しないためにあらかじめ知っておきたい6つのポイントをかんたんに解説します。
公団住宅とは
公団住宅とは日本住宅公団が建設・供給した集合住宅(団地)です。現在、日本住宅公団はUR都市機構(独立行政法人都市再生機構)に名称を変更しています。また公団住宅も「UR賃貸住宅」といった呼ばれ方をします。
賃貸とはいうものの分譲住宅の取り扱いもあります。1970年代には都心部の住宅不足が深刻で、郊外を中心に集合住宅がたくさん供給されました。その後住宅不足が解消されて競合となる民間マンションも増えてきたため、1999年に分譲住宅の供給を終えました。
売りに出されている古い公団住宅を購入してリノベーションする人も増えています。
公団住宅を購入してリノベーションする際の6つの注意点
先に述べたとおり、公団住宅は1970年代にさかんに建てられました。築年数が50年を超える物件も多く、購入やリノベーションにあたって次のような点に注意が必要です。
- 5階建てでもエレベーターがない物件がある
- 間取りの変更に制約がかかる可能性がある
- 天井が低い物件が多い
- 浴室リフォームの自由度が低い場合が多い
- サッシの交換ができない可能性がある
- 防犯性能が低い物件が多い
それぞれ解説していきます。
1. 5階建てでもエレベーターがない場合がある
1965年以前に建てられた公団住宅は4階建て以上でもエレベーターが設置されていない物件が散見されます。エレベーターがあっても、その狭さから家具や家電の搬入が難しいかもしれません。また階段や廊下も狭いところが多く、置き配の荷物やお子さんの三輪車などが置いてあると通りづらいところもあるでしょう。
4階や5階へ階段で行き来するとなれば、買いもので荷物が多いときや足腰に不安がある人は大変です。
しかし通常は高層階ほど物件価格が高くなるなか、エレベーターがないために手頃な価格で手に入ります。
1階や2階であればエレベーターがない点はデメリットにもなりませんし、重たい買いものはネットスーパーの利用などで負担を軽減できそうです。
2. 間取りの変更に制約がかかる可能性がある
公団住宅のリノベーションでは間取りを思いどおりに変更できない可能性があります。公団住宅はRC造の壁式構造で建てられた物件が多いからです。
RC造とは
鉄筋コンクリート造ともいい、おもに柱や梁、壁、床が鉄筋とコンクリートで構成されています。鉄筋は引っ張られる力に強く、コンクリートは圧縮に強い性質を持つためお互いを補完・強化して建物の高い強度を実現します。 |
壁式構造とは
RC造の構造の1種です。建物を支えるために天井や壁、床のパネルを使います。柱と梁ではなく壁自体に強度を持たせている点が特徴です。 |
裏返せば壁式構造では壁で建物を支えるために、壁を取り除くような間取りの変更は難しいといえます。部屋数を減らして広々とした空間にしたい場合は希望が叶えられないかもしれません。
逆に仕事部屋といった個人の空間が必要な人なら部屋数を減らす必要がなく、思いどおりの間取りにできる可能性も高まります。
3. 天井が低い物件が多い
古い建物であるがゆえに天井が低い物件も多くあります。天井や床が建物に直で設置されている場合は天井の高さを変えられないかもしれず、事前に確認が必要です。
また照明の位置を動かしたい場合も、天井に配線があるため難しいでしょう。
天井を物理的に高くすることはできなくても、たとえばクロスを張り替えによって天井が高く「見える」効果なら期待できます。白色や淡い色は照明の光をよく反射するため、部屋の印象が変わる可能性があるからです。
4. 浴室リフォームの自由度が低い場合が多い
公団住宅の浴室リフォームは浴室や浴槽の構造や給湯器の古さから、自由度が大きく制限されるかもしれません。構造面と給湯器の2つの面でお伝えします。
浴室でできるリフォームが限られる
公団住宅の浴室はサイズが特殊かつ、コンクリートの壁で囲まれています。浴槽をユニットバスへ交換するにも、規格サイズのユニットバスではデッドスペースが増えてしまうでしょう。窓の開閉もできなくなりかねいほか、最悪の場合はリフォームさえできません。
また壁の撤去もできない場合がほとんどです。浴室のリフォームはパネルやタイルを貼る程度に限られる可能性がじゅうぶんにあります。
追い焚きができる給湯器に変えられない場合がある
築年数が長いとバランス釜と呼ばれる給湯器が設置されている物件もみられます。バランス釜にも追い焚き機能がついていますが、温度調節機能がなく、満足できる性能ではないでしょう。
またユニットバスに交換したい場合、バランス釜は使えないので給湯器を替える必要があります。しかし配管の位置やマンションの規約によっては給湯器の交換ができません。交換するとしても配管の調査や管理組合の許可を取らなければいけないため、施工費用が高額になりえます。
5. サッシの交換ができない可能性がある
サッシ(窓枠)は建物の共用部分にあたり、自己判断で交換できません。リフォームは基本的には管理組合をとおしておこないますが、次の場合には個別に取り替えられます。建物が古いぶんサッシも古いものが多いため、事前に確認しておきましょう。
- 団地の管理規約に記載がある
- 国土交通省が発行している「マンション標準管理」において、管理組合の了承を得ずに交換できるケースに該当する
もし結露対策や断熱性能を上げる目的でサッシを交換したいなら、窓ガラスを交換するだけでも効果が見込めるかもしれません。ガラスは専有部分に該当し、基本的には個別で取り替えられます。手間や費用を考えれば検討する価値はあるでしょう。
6. 防犯性能が低い
古い公団住宅ではオートロックや防犯カメラがついていないところも少なくありません。集合住宅にはたくさんの人が暮らすため安心といえる面もありますが、部外者が敷地に侵入しても気づきにくいともいえます。
面倒かもしれませんが自治会活動に参加するなどしてご近所さんどうしのつながりを強化する、少しの外出でも施錠を怠らない、モニター付きインターホンや補助錠を設置するなどして対策しましょう。
公団住宅を購入する4つのメリット
公団住宅の購入・リノベーションには注意点もある反面、大きなメリットもあります。おもなメリットは次の4つです。
- 安さ
- すぐれた住環境
- 耐震性
- 住民どうしの交流
1. 安さ
公団住宅を購入する最大のメリットは安さです。建物の価格は新築時をピークに下がりつづけ、築25年を過ぎるころから底値に近づきます。公団住宅は築40年、50年といった物件も少なくないため、1,000万円の予算があれば都内でも好条件の物件を安価で購入できる可能性が高いでしょう。
2. すぐれた住環境
郊外型の大規模な公団住宅では敷地内にスーパーや公園、幼稚園、小学校、医療施設などがととのった利便性の高いところもあります。また緑の豊かさや南向きで日当たりの良い物件が多いのも特徴です。お子さんがいるご家庭にも、ご夫婦2人の世帯にもやさしい住環境といえます。
3. 耐震性
多くの公団住宅で採用されている壁式構造は強度の高さがメリットです。
壁式構造518棟を対象に調査したところ、阪神淡路大震災でも大破・倒壊の被害は1.9%にとどまりました。1981年6月以前の旧耐震基準で建てられた建物でも9割以上が耐震補強工事によって現在の耐震基準を満たしています。
4. 住民どうしの交流
住民数の多い集合住宅には自治会があるケースがほとんどです。ご近所づきあいは面倒に感じるかもしれませんが、ゴミ捨て場や駐輪場など共用部分の管理が行き届く、防犯性を高められるといったメリットを享受できます。
お宝物件となりうる公団住宅のリノベーション
今回は公団住宅をリノベーション目的で購入する際に知っておきたいポイントをお伝えしました。公団住宅はとても古い建物が多いものの、安さや立地環境などから「掘り出し物物件」が見つかる可能性もじゅうぶんにあります。
新築マンション価格が高騰する今、視野を広げて築40年、50年経った公団住宅のリノベーションも価値ある選択肢といえるでしょう。
当社はリノベーションをするしないを問わず、新築、中古、リノベ済み物件、中古物件のフルリノベ、築浅物件の部分的なプチリノベなどさまざまな選択肢での物件購入をサポートしております。
「日本住を愉快に」をコンセプトにワクワクする暮らしをご提案いたします。
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